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うちの家主が・・・な件

      

       

新生児室のガラス越しに我が子を見つめること…5日

昼休みや休憩に覗いて、時には琴子が部屋で授乳をしている姿を見ていると

父親になった事を実感する

    

西垣にそんなに見ても同じだろ……と言われたが、桔梗や既婚者ナースは

口を揃えて、新生児は毎日顔が変わる!と言う

それは見ていてなんとなく思っていた、顔を見ながら名前を考えていると、今日は……と違う名前が浮かぶ…これではタイムリミットの14日までに、最低13個の名前が出来てしまう

せめて2人の退院までにと区切りを着けた……結果8個の名前が候補になった……

      

退院を翌日に控え、日勤を終えて琴子の所にやって来た俺は、子供の名前の候補を書いた紙を持参した

夫婦はよく似てくると言われるが…琴子も同じ事を考えていたのか、同じ様に名前候補をあげていた

それも全て(樹)の字を使った名前ばかり

樹にこだわった訳ではないが……親父、俺、裕樹と、樹の字を使っていたし

何より親父の祖父達も、樹を使ってきた

いわば入江家の男は(樹)を使われていたから、俺は自然にそれを使っていた

その事を琴子に伝えたことは一度もなかったのに、琴子も(樹)を使って名前を考えてくれていた

          

琴子が、クスクスっと笑って、漢字は違うのに、呼び名は同じだね~と俺の書いた名前を見ている

確かに……だけどその中に一つだけ同じ漢字で同じ呼び名があった

用紙を並べて

「決まりだな」

と指で名前を指すと

「うん、決まりね」

と琴子も納得した

     

(名前のお披露目は、退院パーティーの時にお願いね~)

と言っていたお袋、だから決定したことはまだ言えない

     

帰宅して、出生届に名前を書き込む

まだ一緒に暮らしていなくても、父親になった実感する

俺の守るべき者が増えたことに、身の引き締まる

         

当分の間は入江家で二人を見てもらう事になっている

お袋も親父も琴子の両親に代わり、入江家で面倒をみたいと言って、俺や裕樹が使っていた、ベビーベッド等を引っ張り出して設置していた

俺のはホワイトだったはずが、スカイブルーに塗り替えられていた

裕樹のはブラウンのまま、俺の使っていた部屋に置かれていた

親父達がどれだけ楽しみにしているのかよく解る

   

昔から自分の意見や考えを親に話したことがなかった

大学の時に初めて親に反抗するように、医学部に転科

それから親父とは話をすることなく、七年近く顔さえ見なかった

こっち戻って裕樹には事情を話し、親に内緒にしてもらい、琴子がインフルエンザにかかった事をきっかけにお袋に話し…

親父にバレて、結婚を前提に同棲していると嘘をついた……

    

何でも見たり聞いたりするだけで頭に入ってしまう俺だが、感情というものは見たり聞いたりしても戻る事がなかったが、琴子が少しずつ取り戻してくれた

お袋も親父もその事に気づいている、だから琴子の事を本当に大事にしろと言う

    

そんな事、一番よくわかってる、琴子がいてくれたから、俺は変われた、琴子と一緒に居たいと思うよになったのは、琴子が俺を特別視しないから、言いたい事ははっきり言うし、こっちの意見も聞いてくれる、どんな忙しくても笑顔で迎えてくれ、癒してくれる人だ

     

翌日

琴子の病室に行き、退院の手続きをした

その時我が子が着ているベビードレスに驚いた……

自分の黒歴史のせいで、ドレスは買わなかったが、お袋が用意してくれた

既製品では似合わないと、自ら手作りしてくれたベビードレスは

スカイブルーの生地に真っ白なレースを合わせていた

見た目で男の子だと主張しているドレスだ……お袋なりに考えてくれたのだろうな……

琴子は

「こんな素敵なベビードレスを手作りしてもらえて、よかったね~」

と腕に抱いた我が子に話しかけている

        

出生届を出して、一度帰宅をした

仏間に行き、名前が決まった事を報告した

「お父さん、お母さん、あたしもお母さんになったよ、これからもあたし達を見守っていてね」

           

必要な物は全て入江家に運んでおいた琴子の分を少し持って、三人で入江家に移動

裕樹がちょうど好美ちゃんを迎えに行くと出かけ、俺達は三人お袋と親父に迎え入れられた

準備されたベビーベッドに大樹を寝かせ、琴子はお袋に、俺の為にコーヒーを淹れたいとキッチンへ

それを嬉しそうに見ているお袋   

      

裕樹達が帰宅し、出産と名前披露パーティー

「大樹」と言うと、親父もお袋も、目頭を押さえていた

二人共、俺の子供はもしかしたら一生見られないかも知れない……と思っていたらしいから尚更なのだろう

いつもならいつまでもパーティーをしているがさすがに今回は早めにお開きにもした

    

裕樹は好美ちゃんを送って行くと出かけ、琴子とお袋は片付け

親父はベッドで寝ている大樹を見ながらそわそわとしていた……

抱きたければ抱けばいいのに……そう言うと困った顔をする親父

そこにお袋と琴子が戻ってきた、親父は少し言いにくそうに理由を話してくれた

      

(抱き癖がつく、祖父母は甘やかすだけで、しつけるのは自分達だから…)

    

もっともらしい理由だ……

だけど琴子は

沢山抱っこして、話しかけて欲しいと言った

小さな時期は直ぐに終わってしまう、しつけをすると言っても今すぐに始める訳ではない、自分の親の分まで、親父とお袋に可愛がって欲しいと、親父達に話してくれた

自分の思っている事を素直に話す琴子が俺の嫁でよかったと思う

親父もお袋も並んで座り、大樹を交互に抱いて、嬉しそうにしていた

       

この日は親子三人で川の字になって眠った

深夜に何度か授乳したり、オムツを交換する琴子

それを眺めていたら

「ごめんね…明日も仕事なのに……」

「何言ってんだよ、俺達の子供だろ、二人でみるのは当然だろ」

そう言って、授乳の終わった大樹を抱きケップをさせた

「さすが…うまいね~」

「…ケップさせただけだろ…」

こんな些細な事でも、嬉しく思う自分に内心驚いていたが……

       

         

🏥🏥

病院で食事をしていたら、琴子の先輩看護師がやって来た

二人は俺に琴子をどうやって落としたのか、と聞いてきた

別に落としたとか落ちたって感じではない……

一緒に暮らしていて、いつの間にか…という感じだったような気がする

一緒にいて素の自分を見せられる事が決め手だったし、琴子も外見や年収でなく、一緒にいて安心出来るということと、お互い仕事を優先しがちだった為、仕事を理解してくれる人でなければ、結婚なんてしていなかった

       

どの人にも俺は完璧な人間だと思われていた

だけど実際は、寝起きはあまり良くない……それは琴子に言われて気づいた…

それまでの俺はどちらかと言えば、気を張っていて、眠りが浅く少しの物音で目を覚ましたりしていたが

琴子と暮らす様になってから、深い眠りに付くようになった、それはきっと安心感からなのだろ

休みの日には、けっこう寝癖のついたままの頭で過ごしていたり、風呂上がりは上半身裸でテラスにいたり…

それを琴子に(みんなが知ったら……ドン引きしそう…)と言われたほど……

そんな姿を見せられるのは、やっぱり心を許した人にだけ

付き合う前からどちらもありのままの姿を見せていたから、結婚しても何も変わらない

変わったと言えば、子供が出来て守る者が増えたこと

琴子は義理とはいえ、両親が出来たことだ

   

うちの両親を見た二人は

(入江先生のご両親でよかった)(安心しておまかせできるわ)と言ってくれた

それは琴子を本当の娘の様に可愛がっている姿を見たからだ

この二人の先輩看護師は、琴子を妹の様に可愛がっていたから、なおさら嫁に行かせるなら、琴子を理解してくれる人の所にと思っていたようだ

     

         

🌌🌌

親によっては…特に母親は息子が嫁に取られた……という気持ちになるとか…

うちの場合、お袋は琴子を嫁ではなく、娘として見ているが…

         

以前琴子の親友の、高宮と小森も看護師二人と同じ事を言った

(入江君のお母さんが、琴子のお母さんでよかった)

(ホントにね~)

(同じ嫁としては…頼れる両親が居ないから、困った時は助けてあげようと思ってたけど)

(こんなに琴子を可愛がってくれる両親なら安心だね)

と俺達の入籍の時に言っていた

      

出産前にお袋は

(こんな事言ったら……不謹慎なんだけど…お兄ちゃんのお嫁さんが琴子ちゃんでよかったわ……私は娘との生活に憧れてたから……もしかしたらでしゃばりでうるさい姑…って思われてるかも知れないけど………本当ならご両親と一緒に病院に行ったり…お買い物したり…それが普通のことなのよね…だけど……)

(ふぅん…お袋でもそんな事考えてたんだ…でも……琴子の両親はそんな事でとやかく言う人ではないと思うぞ…秋田に行った時……お祖母さんか言ってた、何も出来ない娘を嫁にもらってくれた相原さんやその家族に可愛がってもらえてよかった、琴子もそんな子になって欲しいって……嫁として、相手の両親に可愛がってもらえる事の方が幸せだって、厳しく言われるのは至らない所があるから、何も言わないでいられる方が悲しい…だから琴子には自分の意見だけでなく相手の意見も素直に聞くことは大事たと教えてきたって)

(琴子ちゃんが素直に返信をするのは……やっぱり嫁だからかなって…思ってたけど、育った環境なのね)

(お袋もありのままでいいんじゃない?無理して我慢しないで、今まで通り琴子を娘として可愛がってくれる方が、亡くなった両親も嬉しいと思うよ)

(まあ~ありがとう、お兄ちゃん)

       

親父は親父で

(ワシは料理なんて出来ないから……上京して直ぐのころ……焦げた匂いにアイちゃんが気づいて、部屋に訪ねてきて…部屋は煙りが充満していたから……何にも言わないで換気扇を着けて、窓を開けて、大丈夫かい?って聞いてくれて…台所のフライパンを覗いて、焦げてるけどなんとかなるよ…そう言って自分の部屋から材料持ってきて、ワシの作りかけの野菜炒めに玉子と調味料を加えて…食べられる様にしてくれた、そんなアイちゃんの娘さんをお前の嫁にもらえて、ワシは嬉しい)

と……涙ぐむ…その話し何度目だ……

と言いたくなるが、親父にとっては親元を離れて東京にやって来て、頼る人もいない時に手をさしのべてくれた人で、大学を卒業するまで、アルバイトもしないで食べていけたのは、琴子の父親のおかげだ

   

俺と琴子の出会いというか…初めて話したのは……親父達と同じ年の頃

最悪な出会いだったな……琴子を見ないで偽善者扱い…

二度目にあった時は病院、琴子から

(あなたが医師になるとは…)

(意外でしたか)

(えぇ~とても…)

と嫌みを言われた……親父達の出会いとは違って最悪な出会いだった……

       

出会いは最悪だったが今は幸せだ

最悪な思い出も、今はあの出会いがなかった琴子と結婚出来なかったかもしれない

       

               

              

              

             

     

      

       

    

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Author:itkiss
初めてイタズラなkissのIF物書いてみました