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うちの家主が・・・な件

     

      

ベッドの上で楽な格好で過ごす様に言われた琴子は、あぐらをかいた形で座っている……

陣痛に合わせてなのか、背筋を伸ばして、ふーと息を吐く

こんな時に思うのは…本当に男は何もできない……

琴子はまだ大丈夫だからと、お腹を擦っている…

    

外が明るくなり、看護師達が往き来する音が次第に多くなる

「入江さん、おはようございます、朝食ですよ…」

「ありがとうございます」

「食べられそうなら食べてね」

「わかりました」

琴子の朝食の時間にお袋に電話をすると

ひどくあわてているのがよく解る……

こんな時だから、落ち着いてくれ…

これから子供を産もうとしてる琴子の方がよっぽど落ち着いてる……

(お昼過ぎに産まれるなら、お仕事してきてね、あたしは大丈夫だし何かあったら直ぐに看護師さんに連絡してもらうからね?)

(……)

こんな時にまで仕事をしろと……予定日を過ぎているから、休みを取っているわけではないが…それなりに休めるようにしておいたのだが……

かといって…ここに居てもどうすることも出来ない訳では……

お袋が来たら交代してもらう事にした

とりあえず朝飯をコンビニへ買いに行くと

夜勤や当直だった看護師や医師の同僚にあった

私服でめったに病院内を歩いていないからか…珍しそううに見てくる……

カゴの中身を見て…気づいたらしい、俺がここにいる理由

まだ産まれていないと知ると、生まれたら新生児室に見に行きますって……

止めてくれ……うちの子供は見せ物ではない…

やっぱりあのまま、土屋レディースクリニックにしておくべきだったか…

今さら病院の選択を間違えたのではと思ってしまう

       

朝食を買い、病室に戻ろうとした時、後ろからお袋が声をかけてきた

思ったより速かったな……

陣痛室に入ると、琴子がさっきより顔を歪めて、陣痛の痛みに耐えていた

お袋は荷物を直ぐに置くと、琴子の腰を擦りだした

     

やっぱりこういうときは女親が頼りになる、お袋も二人子供を生んだんだから、どこが辛いのかわかっているようだ

ここはお袋に任せて、琴子の言うとおり昼間で仕事に行こう…

ここに居ても落ち着かない

       

       

お袋に任せて外科病棟に行くと、ステーションに来る看護師はみな、なぜここにいる?という顔をする……

理由を言えば決まって、琴子さんらしいてますね、と笑う

西垣は、俺の代わりに~と言っていたが

他の看護師に仕事しろと怒られていた

本来なら俺は来ないはずだった訳だから、西垣先生は通常業務をしてくれないと患者が困る

西垣の行動になぜかいつも温厚な桜井さんが激怒…

彼女は今日誕生日で彼がバースデーを祝ってくれるから、絶対定時で仕事を終わらせたいと言う理由があった

今日俺達の子供が生まれたら、誕生日が同じにる、そして今日は家族団欒の日だから、よかったですねと言われた

家族団欒の日に家族が増える、確かにいい日なのかも知れない

その横で西垣が自分は6月9日が誕生日だと言った……その日は…リサイクル、ロック、ネッシー……ポルノの日だ…

それを言うとナースステーションの中は、西垣先生を見て、納得していた

よかった……西垣と一緒になったら……と思わず思ってしまった

     

仕事を終えて、直ぐに琴子の所に戻った

陣痛の感覚が短くなっていて、額や首に汗をかいていた、それをお袋がタオルで優しく拭きながら、スポーツドリンクを飲ませていた

俺の顔を見て、辛いのに微笑む琴子

お袋が、まだ子宮口は7センチほどだと言われたと言う

まだかかりそうだな…と思っていると

陣痛に琴子が顔を歪めてた

   

パチンッ!

鈍い音が微かに聞こえ、側にいたお袋が破水したのでは!と琴子に確認する

アルコール消毒をして、琴子の足の間に手を入れると生暖かい水の間食

「お袋コールして、破水だ」

お袋は直ぐにコールをした

「頭が……出始めてる、琴子もう少し我慢しろ」

子宮口がすでに全開らしく俺の手に硬い間食と濡れた細い髪の間食が伝わってきた

直ぐに駆け付けた、看護師と助産婦、車椅子で移動するつもりだったが、いちいち車椅子に乗せ、分娩室ではベッドに移動……そんな悠長にはしていられな

立ち会い出産を希望していたから

「車椅子より、俺が運んだ方が早いです」

そう言って、琴子を抱き上げた

   

「琴子ちゃん!ファイト!」

   

その言葉に琴子は俺の首に回していた手をはなし、お袋にガッツポーズを見せた

直ぐに隣の分娩室に入ると、すでに看護師達が準備をしている

「入江先生、これを着てくださいね」

渡された、使い捨ての白衣を着た

   

産科の勉強をしていない訳ではない……でも出産に立ち会うのは初めてだ

助産婦も看護師も、琴子を励ましながら、指示していく

日頃から、

出産の呼吸法を熱心に練習していた琴子(お袋と一緒に…)

その甲斐あってか助産婦の指示通り、呼吸し力を入れる

「次は、頭を上げておへそを見てね~」

と指示する助産婦、看護師が

「入江先生、頭を持ち上げるのお手伝いしてあげてくださいね」

この頃になると自分では、なかなか頭を持ち上げる力が残っていない妊婦もいるらしい

ただ立ち会って、励ましたり汗を拭いて声をかけるのではなく、夫婦で協力して出産する、頭を持ち上げるだけのことだか、それだけの事でも緊張する

      

「そのままよ~はい、出てきた~」

助産婦の腕の中で小さなうめき声…それが大きな泣き声に代わる

「おめでとうございます、元気な男の子だよ~」

      

助産婦はまだ母親と繋がったままの赤ん坊を、琴子の胸に乗せた

琴子は

「やっと会えた~…こんにちは」

そう言って涙目になりながら我が子に話しかた

看護師達は、俺達におめでとうございますと、笑顔で祝福の言葉をかけてくれた

   

「入江先生、へその緒のカットしませんか?」

「え?」

すでにクリップで止められている、へその緒

琴子は

「いいんですか?」

「入江先生は医師免許有りますからね、大丈夫よ」

「ありがとうございます」

助産婦の若葉から、カット用のハサミを受け取り、へその緒で繋がった母子を切り離した

赤ん坊は直ぐに体重や身長、足のサイズ、頭のサイズを図られる

心音、呼吸も正常

真っ白なタオルにくるまれ、看護師が

「入江先生、処置が終わりましたよ」

そう言って俺の腕に乗せられた我が子の重みに、腕に力が入る

やっと会えた…琴子の言葉が頭を過る

     

分娩室から出て、お袋の所に行くと

ハンカチで涙を拭いているお袋

「お袋…」

「お兄ちゃん、おめでとう」

「お袋の期待には添えなかったけど…」

お袋はずっと女の子が欲しかった人だから…女の子の孫を期待していたのではないかと思っていたが

「男の子でも女の子でも、どっちでもかまわないわよ」

お袋の腕に赤ん坊を渡すと、嬉しそうに見つめ

「だって~あんなに可愛い娘が居るんだもの~」

琴子を本当に我が子の様に可愛いがっているお袋、その言葉で少しホッとした

        

琴子の処置も終わり、病室に戻った

お袋は九州の親父やお袋の実家、琴子の父の実家や秋田の祖母達に連絡してくれていた

俺も小暮院長や桧山さん、外科、小児科に、無事に男の子が産まれた報告をして病室に戻った

俺も琴子も深夜から気が抜けない状態から解放され、いつの間にか寝てしまっていた

気がつくと、病室に親父や裕樹、好美ちゃんが来てくれた

勤務が終わった看護師や同僚医師も新生児室を覗いてから、病室に顔を覗かせて、おめでとうございますと声をかけてくれた

        

新生児室から病室に連れて来られた我が子

親父や裕樹、好美ちゃんの腕の中でもぞもぞと動いていた

その重みや、やわらかさ、暖かさに、裕樹達は自然に微笑みを浮かべる

      

      

みんなが帰った後

琴子に労いの意味を込めて、キスをすると

「!し、失礼しました!」

と……タイミング悪くやって来た、看護師に観られてしまった……

     

        

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Author:itkiss
初めてイタズラなkissのIF物書いてみました