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宝物(16)

    

      

「…お祖父様……」

「なんだね…」

あの食事から数日、沙穂子は辛そうな顔をしていた

「…沙穂子…直樹君との事はお前が望んだこと……自分の思い通りに何でも行くなんて、都合のいい話はない…政略結婚というものはそういうもの…」

「……」

「…直樹君はそういう男だ、それを知っていたはずだが……」

「………政略結婚だから…お互い干渉しない……眠るのも…別々………直樹さんは……私との子供は……望んでいないと…」

「そうか…それも仕方あるまい……」

「お祖父様は…それでも……いいのですか?」

「…北瑛社は何も沙穂子の子供が継ぐ事もない……血縁者に優秀な者がいればそれに継いでもらえばいいだけの事」

大泉はそう言うと部屋を出ていこうとした

「…直樹さんには……すでに…」

「なんだ…」

「……琴子さんとの間……子供が……」

「…その子を養子に迎える事も出来る…そういいたいのか…だが……琴子さんがそれを許すと思うか…姿を消してまで、直樹君との子を守っている……直樹君もそんな事は許さんだろう」

「…知っていらしたの…ですか……」

「……直樹君に聞いている…」

「……いつ…ですか…」

「10日ほど前……お前は友達とクリスマスパーティーに出掛けていた日ここに来て……頭を下げられた…婚約を解消したいと……その時理由を話してくれた…沙穂子も知っているはずだと……」

「……そんな…」

「ワシは……沙穂子がそれでもかまわないと言ったらどうするか訊ねた…その時は沙穂子に従う、ただし……沙穂子も聞いた通りの条件を出して来た…琴子さんとの子供以外はいらない…好きでもない人との間には、作れないと言った」

「そこまで知っていらしたのですね…」

「どうする……琴子さんの子供を……養子にするのか…」

「いえ……そんな事をしたら……自分が……惨めになります…愛されてもいないのに……他の方が生んだ子供を…育てるなんて……」

「……沙穂子が決めること…これ以上…ワシは口出しはせん……」

     

すべてを聞かされたにも関わらず、祖父が直樹を咎める事もしていなかった

今までなら、沙穂子の思い通りにしてくれた祖父

今回ばかりは、沙穂子自身の事

結婚すれば入江になる、この先は全て自身で考えていかなければならない…

どんなに直樹が冷たくても、自分を見なくても、それを誰かのせいにすることは出来ない

「…お祖父様………」

     

          

          

🎄❄️🎄❄️🎄❄️🎄

ザザザザザー……

       

「うわ!」

「な、なに?」

「……屋根の雪が落ちただけだ…」

ストーブに薪を入れる政臣が呟いた

「……そうなんだ…」

「びっくりだね…」

    

屋根に積もった雪が自然に落ちる構造になっているため大きな音がしただけなのだが、二人は初めて聞く音

    

「うちは、ストーブで家全体が暖かくなるから、屋根の雪も落ちやすいのよ、たまにあるから」

「そうなんだ……」

「…外に出たときは…気を付けろ…いつ落ちるかわからない……」

「雪に埋もれるだけならいいが…雪質によっては危ないからな」

「そうなの?」

「サラサラした雪ならいいけど、積もった雪は重い直撃すれば雪に埋もれて窒息する事もある」

「……そうなんだ……」

「…気を付けなきゃ…」

           

テーブルに置かれたチラシを見た美南

「あ!なにこれ~」 

「…あ~、花火か」

「冬に花火…」

「2月に雪祭りがあるんだ、それで協賛を募ってる」

「へ~」

「一般の人でもいいの?」

「そうだよ、一口三千円からそれに応じた花火を打ち上げてくれるし、名前も呼ばれるし、張り出してもらえる」

「誠也さんも?」

「当たり前だ」

「他になにするの?」

「チーム組んで、24時間で雪像を作るんだ、一応賞金もでる」

「へ~本格的な冬のお祭りなんだ」

         

「秋祭りの時も出してだよね、政臣じいも誠也さんも」

「一家に一つじゃだめなの?」

「…所帯を持ってれば、個々に出す、まぁ結婚していなくても出す奴もいるけどな」

「秋祭りの時みたいに、誠也さんも何かやるの?」

「一応、商工会に入ってるから、顔は出すよ」

「大変だね」

「秋祭りに比べたら楽だよ…」

「練習とかないもんね」

「そうだな…」

     

秋祭りには、獅子舞の獅子の中にいた誠也、当日まで一月毎晩練習に行っていた

子供の頃にはお囃子の笛を吹いていたため、子供達に教えながら、獅子舞の練習と忙しくしていた

当日は朝から頼まれた家の前で獅子舞を披露する

午後からは、お宮で披露と1日中動いていた、地主ということもあり、この家には毎年、庭で獅子舞を披露

琴子達は初めてみる祭りの様子に驚いていた

この辺りは獅子舞に出る子供達はお休み、小学生も中学校もお昼からは休校

東京では秋祭りの為に休校などなかった

春も春休みに小さなお神輿を担いで、子供達がかく自治会ごとにやっている所もあるくらいなもの

東京を離れてから、初めて体験することが多く、ここに来て良かったと思う琴子

     

🎄🌁🎄🌁🎄🌁🎄

        

                

「直樹君…すまなかったね」

「いえ…俺にも責任はあります…」

「孫娘可愛さに…君を調べ……君の高い能力を欲しいと思ったワシにも責任はある…あの子とのことを薄々わかっていながら……全てを兼ね備えた孫娘の方が選ばれて当然…そんな事を思っていた……」

「沙穂子さんは…とても魅力的な女性です…」

「なら…なぜだ…」

「…琴子は…僕に無い物を沢山持っている女性です…それに誰も僕が悩んでいることに気づかなかったのに、琴子だけは、それに気づいて……自分なり考えた事をや思っていることを、話してくれた…僕の中で琴子は側に居るのが当たり前になってしまって……大切な事を伝えていなかった…」

「琴子さんが何処にいるのか……わかっているのかね…」

「…いえ…」

「…ワシに出来ることはあるかね?」

「大丈夫です、琴子の事は自分で探しだしてみせます」

「そうか……だが……手伝える事があったら、いつでも言ってくれ…」

「ありがとうございます…」

       

         

※~※~※~※

直樹は和希を追いかけ、話をした日、そのまま大泉の所に行った

沙穂子が留守なのはわかっていたが、その方が話やすかった

大泉に深く頭を下げ……婚約解消と融資の事も諦めると申し出た

理由を聞かれ、正直に沙穂子と見合いをする前から、琴子と関係があった事、子供が出来ている事、それを沙穂子も知っているはずだと伝えると、大泉は

「それでも君と結婚すると、沙穂子が言ったらどうする気だね、子供の事を知っているのなら養子に迎えることもできる」

「その時は沙穂子さんに従います、ただし、結婚をしても沙穂子さんとの間には子供は望まないでください…僕は琴子以外の女性とはできません、寝室も別々でなければ眠る事も出来ない人間です、沙穂子さんがどう過ごそうと干渉は一切しません、僕も干渉されるのは嫌いなので…それと琴子の子供を養子に迎える事は絶対許しません……」

「……そうか…それを沙穂子には?」

「まだ伝えていません、僕が琴子の事に気づいていることも知らないでしょから」

「わかった……沙穂子がどう答えを出すかで今後の事は決めて行こう…、融資はこれとは別の話し……元々沙穂子が君との接点欲しさに申し出た見合いだからな融資はあの条件のままで進める…社長代理の君に銀行が融資するはずがないのを承知で融資を申し出たのはワシだ」

「……ありがとうございます…」   

       

     

直樹の話を聞いた後……

沙穂子が自分達に琴子の事を伝えるのか、様子を伺っていた大泉

                 

琴子の事がなかったとしても、融資のための結婚、沙穂子に気を使う事も、自分から誘う事もない直樹に、沙穂子も落ち込んでいた

結婚してしまえば、いくら政略結婚でも、それなりに情も湧き、義務的でも跡取りを作るくらいはしてくれるだろうと思っていた……

今日の直樹の目を見てわかった…琴子が側にいた頃の様な目をしていない

自分の意思のかたさを伝えていた

    

数日、沙穂子の様子を伺っていた大泉、直樹からは何も連絡もない

琴子の事を自分に話す様子もない

「……直樹君も一段落した頃だ……そろそろ二人の事を発表してはどうだ?クリスマスも近いその頃にでも」

「…そうですね……」

「直樹君と食事でもして、ゆっくり話をするように…手配しておいてやろう」

「お祖父様……」

※~※~※~※

結果、沙穂子は自分から婚約解消を申し出た……

結婚をしても、そこに自分の思い描いた、家庭は築けない…

自分を見てくれない夫の帰りを待つだけの生活になる

それに、直樹の母、紀子も…

長男だからといってここに同居する必要はない、と沙穂子に言ったことがある

望まれて結婚する訳でもなく、祝福をされているとは言いがたい

大泉家を出れば、祖父に頼る訳にもいかなくなる

    

     

    

      

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No title

そうか?沙穂子さん可愛いその事との、優秀な、入江君と、策略結婚かと?思ったよ😃だからこそ⁉️まだまだ‼️どろどろな感じかと思いきや😃いくらお嬢様がよくっても、相手が、駄目じゃどうにもならない😃いくらお嬢様だかって全部思い道理にいくわけじゃない😭嫁さんに、なるなら、大泉のやり方じゃなく、相手の、家庭似合わせなきゃいけないし⁉️それも紀子ママは沙穂子さん歓迎されていないですからね😱そばに、沙穂子さんのおじいさまはいないですからv-12

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Re: Re: タイトルなし

>greenさんコメントありがとうございます
>
> 沙穂子さんやっと言えましたが、お祖父様が知っていたことに驚きでしょうね…
> 知っていたなら……と思いもあるでしょうが
> お祖父様はお祖父様なりに忠告と言いますか……沙穂子が思う様な付き合いは出来ないと言ってますからね
> 何でも自分の思い通りには行かない事を告げていたんですけどね……

>
>
> 私の実家は秋のお祭りは前夜祭があって、この日は半日で学校が終わり翌日は休校でした

Re: No title

>なおちゃんさんコメントありがとうございます

そうでしたか!すみません!どうも…どろどろのやり取りは……
苦手なもので(笑)

そうだね、いくら沙穂子さんがそれでもいいと思っても、入江君の心は琴子ちゃんに向いていて、結婚しても家庭内別居、もしくは籍だけ入れて別居……なんてことも入江君ならやりかねないでしょうね
しかも紀子ママは、入江家には入れないと宣言してますからね

そんな事になっても、お祖父様は沙穂子さんが決めた事、政略結婚というものは、そんなもの……と言った感じですしね

Re: ありがとうございます

>ルルさんコメントありがとうございます

いくら可愛い孫娘とはいえ、お祖父様も入江君の話を聞いたら考えますよね、知っているのに何も言わないでいる沙穂子さんに
そして入江君の条件…ここまで言われたらね
お祖父様としては政略結婚だから、仕方ないで終わりますが、沙穂子さんは結婚しても家庭内別居…
沙穂子さんが望んだ事だから、最終的には本人に任せる様にしたのも、お祖父様なりに沙穂子さんに考えて欲しかったのかもしれない

Re: タイトルなし

>向日葵さんコメントありがとうございます

本当なら、あの公園での二人のやり取りで気づけ!と言いたかったです……
本当にね…入江君は何を考えているのやら……

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