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宝物(13)

        

         

「お久しぶりですね…」

「……」

和希は上目遣いで相手を見た、少し暗い表情の沙穂子が立っていた

11月も終わりに近づき、ブランド物のショールを身につけていた沙穂子

数日前にやっと和希を見つけた沙穂子は、今和希が入り浸っているカフェを突き止めた

             

「……どうも…」

冷たい言い方、本から目を離さないで話す姿がどことなく、直樹に似ている

「少しよろしいですか…」

「…」

無言でいる和希の前に座った

店員がやって来ると、沙穂子は紅茶を頼んだ

      

「鈴村さんとおっしゃるのですね」

「…わざわざ、調べたのか…」

「…どうしても、あなたとお話がしたくて…」

「…いくら女だからと言っても、外見はこれなんで、婚約者の方に迷惑になるのでは…」

本を閉じて沙穂子を見た

「…鈴村さん…お願いです、琴子さんの居場所を教えていただけませんか」

「………」

「…御存じですよね…」

「……知っていてもあなたに教える義理はないと思いますが…」

「…琴子さん………直樹さんの……子を身ごもっていらっしゃるのでは?…」

「…誰がそんな事を…」

「私のご学友です……琴子さんとあなたが、話をしているのを…偶然聞いたそうです……」

沙穂子は和希の顔を見ない様に、少しうつむき加減で話している

           

「……そうですか、あれからどれだけ経っているか………結婚出来ない相手の子を生むとでも?」

和希は沙穂子の顔を覗きこむように座り直した

「………」

和希の言葉に息を飲む沙穂子

確かに出来ていたとしても直樹とは結婚出来ない

          

和希の目が怖い……そう思った

1つの命を奪った…そう攻めている様な目

怯えた様な沙穂子に

「…聞きたいことはそれだけなら、話は終わりだ…」

そう言って、鞄を持つ和希

「待って…ください……」

「……」

「琴子さんの……居場所を…」

「…なんのためだ、今の話を聞いた罪悪感か?」

「…琴子さんに…会って……お話が…」

「だからなんのために話すんだ!あいつがどんな気持ちで過ごしているか…わかって言ってんのか!」

「………」

沙穂子はうつむいたまま

「……直樹さんが……琴子さんのいた頃の直樹さんに…戻って欲しいだけなんです…」

ただならぬ雰囲気に店員は静かに紅茶を置いて立ち去った

                 

「言ってる意味がわからない…」

「…琴子さんがいた頃の直樹さんは……とても紳士的で、私がお願いすれば時間を作ってくださり…食事や……美術館にもお付き合いしてくださったのに……琴子さんが……居なくなってからは……とても冷たくて……」

「………」

「今では……仕事、仕事で……お家に伺っても、いつも書類を手にしていて…私のお話を聞いているのかいないのか……わからないくらい…無表情で……」

「………」

「だから……琴子さんが……側に居てくだされば……きっと元の……優しい直樹さんに……」

      

バンッ!!

          

大きな音を立てて立ち上がった和希

沙穂子を、見下ろし

「……だから…琴子と会わせろってか……」

「……」

「あんたの婚約者が……冷たいから…」

「……」

「琴子は入江直樹の精神安定剤だとでもいうのか!」

「……そ、そんな…」

「琴子が側にいたら、入江が以前の様に自分の方を向いてくれる……優しい入江に戻ってもらう為に…」

「………」

「自分の幸せの為か……そのためなら琴子を入江の側に置いておくのか?」

「………」

             

「……琴子を……妻公認の愛人に…する気なのか?」

「………」

怒りを抑えた様な和希の低い声に、怯える沙穂子

         

「あんた達がどうなろうと知った事じゃない……あんたがじいさんに頼んで、仕組んだ事だろ…パンダイの入江直樹、とても素敵な人だけど…自分には何の接点もない…噂では女性が話しかけても、誘いに乗らないくらい硬派な人……そんな事を言われたらた、可愛い孫娘の頼み、融資の条件に見合いを持ちかけた、孫娘と入江の接点を作るため……だけど入江は渋った……あんたのじいさんは更に条件を上乗せ…政略結婚をすれば、融資の返済に付く利息はチャラ……政略結婚だから、入江は仕事に専念してもかまわない、孫娘はそのくらいの事は十分承知しているってな……」

「……私…ただ……………」

「……琴子といた頃の入江に戻って欲しいだけ…、入江がどんな人間か、あんたは知っていたはずだ………噂通りの男なんだよあいつは、あんたが見た琴子と居るときの入江は、琴子がそうさせていたんだよ…あいつは気づかないうちに、琴子と居るときだけ…心に隙ができてた……その一部分をあんたは見ただけだ……」

「………」

             

「二度と俺に話しかけるな…琴子を探そうなんて思うなよ…」

和希は鞄を持つとカフェを出て行った

      

           

             

🍁🍁

「……あれなに?」

「……虫?」

「まさか~雪…?」

「でも……ふわふわふらふらだね…」

庭で落ち葉を片付けていた政臣と琴子と美南の側に小さな白い物がふわふわしていた

「……雪虫だ…」

「「雪虫」」

「……雪が降る頃になると飛んでる…」

琴子が手で捕まえると、小さな綿を付けた虫が手のひらを移動していく

「ほんとだ~ふわふわが雪みたいだね」

「初めて見た…」

「こっちのは、青白いふわふわだね~」

「不思議~」

標高の高い所では、すでに山頂はうっすら白くなっている

本格的に雪の降る日が近づきつつあることを知らせる様に、飛んで行った雪虫

       

              

               

🎄🎄

12月になりパンダイは、ラケット戦士コトリンのゲームソフトのCMを流し始めた

和希はそのCMを見たとき、琴子がモデルだとわかっていた

「あいつは……いったい何を考えてるんだ…こんなもんゲームにして……」

「和希、どうかしたの?」

「……別に」

「わかいいキャラクターね、このコトリンて」

「……そう?」

「うちに来てる患者さんのお子さん達が、クリスマスのプレゼントに買って欲しいってけっこう人気みたいね」

「ふぅん」

        

「クリスマスが近くなると…増えるのよね……出産…」

「クリスマスイブかクリスマスに合わせてって…そんなの……結婚したら…いつ授かっても嬉しいもんだろ……」

「あら和希はそんな風に思うのね」

                       

 「…和希ちゃん……ごほんよんで」

「いいよ」

姪を抱き上げると膝に乗せて、持っていた本をひらく

「…人魚姫……」

この数日何か考えこんでいる和希を心配そうに光希が見ていた

       

本を読み終えると、光希は

「ありがとう、ほら、もうねる時間よ」

「おやすみ、和希ちゃん」

「おやすみ、心咲」

     

如月が以前言っていた言葉が頭の中をぐるぐるとめぐる

(彼も彼女が好きだったとしたら………)

いくら政略だとしても、琴子は何も直樹に言えないでいた事には間違いない

直樹が琴子に気持ちを伝えていたなら、琴子も少なからず直樹に相談出来ていたはず…

出来なかったとしても、お腹の子に父親はもういないなんて教える必要はない

一度はお互いを思って出来た子なのだから……

琴子が居なくなってからの直樹…沙穂子が言う通りなら……直樹も琴子を思っていたとしか思えない……

   

沙穂子は直樹に話したのだろうか……琴子の事を、きっと1つの命を奪った…そう思っている……

ソファにゴロンッと寝転がり

「入江……お前はどうするんだ…この先……」

そう呟いた

       

       

🍂🍂🍂

吐き出す息が白くなる…

「おはよう、寒いね~」 

「おはよう…」

「美南ちゃん、眠そうだね」

「新が何回も起きちゃって…」

「新君預かろうか、あたしもう起きてるし」

新を抱いた美南はあくびをしながら

「いいの、じゃ…一時間だけ…」

「うん」

新をベビーベッドに寝かせると

「オムツ替えようね」

機嫌よく手足を動かす新のオムツを替え

冷凍庫から保存されていた母乳を取り出し温める

「ちょっと待っててね…」

新を抱き上げて椅子に座り、哺乳瓶を近付けると、手を伸ばす新

「美味しい?」

「新君は元気いっぱいだね…」

      

      

           

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コメント

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No title

私も、腹がたった‼️お嬢様が、自分の為幸せの為、琴子ちゃんと、琴子ちゃんの子供を、出しに、しようとしてるようにしか思えない😵和希さんが怒るのも無理ないv-412

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Re: No title

>ルナさんコメントありがとうございます

お嬢様は…元の直樹といいますが……これが本当の直樹ですからね…
琴子ちゃんが側にいたら……なんて絶対無理ですよね

和希さんはね…そりゃ怒りも爆発しますよ
身勝手なことばかり言われて
和希さんにしたら、兄妹の様に接してた琴子ちゃんだからね

入江君やっと動きます

Re: タイトルなし

>名無しさんコメントありがとうございます

和希さん男前です!
妹みたいな琴子ちゃんを守るためなら、お嬢様にも容赦しません!

和希さんは、大学で過ごす二人をきっとどこかで見ていたでしょうからね

琴子ちゃんは都会を離れて、のんびりした田舎で楽しく暮らしております
お嬢様、和希さんの言葉で少しはね……琴子ちゃんの気持ちを考えて欲しいですね

Re: No title

>なおちゃんさんコメントありがとうございます

お嬢様の身勝手な言い分に、和希さんだって怒りますよね

書いてる私も……腹が立ちました(笑)

Re: ありがとうございます

>ルルさんコメントありがとうございます

このお嬢様の言ってる事はね…和希さんにとって妹の様な琴子ちゃんを、自分の幸せの為に直樹の側にってね……

入江君が自分を見てくれるなら…って
そんな事したら、琴子ちゃんはどうなるの?
一生日陰の生活になってしまう!
そりゃ和希さん激怒だよね



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