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宝物(11)

    

    

「誠也さん、お客さんだよ~」

「わかったー」

連休中は何かと忙しい誠也

ここは静かでほとんど人も来ない場所だが、連休には地元のペンションや民宿の人達がやって来る

今日は誠也の手伝いをしている琴子

「悪い…追加で一キロ…」

「一キロな~琴子、5000円もらっておいて」

「はぁい、5000円になります」

「思ってたより、好評なんだよ、イワナの塩焼き」

「そりゃ、養殖でも一匹350円でスーパーに並んでる魚だ、宿泊費込みでバーベキューで食べられるなら、みんな食うだろうよ…」

まだピチピチと動く魚を水の張ったケースに入れる誠也

「しかも、活きがいいから、子供達はバシャッバシャッ手を入れて遊ぶから大変だよ…」

「夏場は、つかみ取りできても、今は寒いからな」

      

誠也の養殖場にやって来る人も、琴子のことは知っているから気軽に話しかけてくる

「そうだ、うちの嫁さんが、今度琴子ちゃんも一緒にマタニティー教室行かないかって」

「マタニティー教室?」

「ここら辺は病院も遠いだろ、だから月に一度お産前に骨盤広げる体操だとか、逆子を治す体操なんかを教えてくれるんだよ」

「あ~美南も行ってた、あれな」

「ほら、琴子ちゃんうちのと同じ時期だから、ちょうどいいだろ」

「どうする」

「行ってみようかな」

「そうしろそうしろ、同じ妊娠同士、いろいろ情報ももらえるだろ」

「それじゃ、よろしくお願いします」

「おう、嫁に言っとくよ、それじゃ」

「ありがとうございました~」

    

お昼になると和希が二人にお弁当を持ってやって来た

「うわ~美味しそう~」

「じぃの採ってきた、舞茸の炊き込みか」

「さすが天然物、香りがいいね~」

「街じゃなかなか食えないだろ」

「当たり前だよ、これキロ数千円なんでしょ…」

「天然黒なら、万単位になることもある」

「え!松茸並みにお高いの!」

「この辺りは松茸よりも舞茸が好まれる、香りが良くて歯ごたえもいいから」

「地元の人はそう言ってたな」

「今じゃ、スーパーで年中買えるけど…」

「舞茸の由来知ってるか?」

「舞茸の由来……ヒラヒラして舞踏会のドレスみたいだから?」

「ブッブー」

「舞茸はとても見つけるのが難しい、見つけた人は、思わず舞い踊ってしまうほど喜んでしまう」

「えー!そうなの~」

「そうなんだ、そのくらい希少な物だったんだと」

「そうなんだね~」

「舞茸は毎年採れるとは限らない、その年の天候によっては出て来ない」

「だから見つけるのが難しいのね」

         

                

お昼からは和希も誠也の仕事を手伝ってくれた

       

宿泊客様に予約された数の魚を、ペンションや民宿の名前の入ったケースに入れていく二人、琴子はそのケースに伝票を挟んでいく

中にはすでに下処理をしたものを注文してくる為に誠也は丁寧にさばいていく

       

「…誠也さん、この大きなのはどうするの?」

「それは、刺身用なんだ」

「お刺身でも出すなんて、大変ですね」

「祝いの席に出すんだと」

「お祝いって…お誕生日とか?」

「客の中に、金婚式の夫婦がいて、その記念旅行に子供や孫と来てるんだと、ケーキとかありきたりな物じゃない物を出して欲しいって要望なんだ」

「それで、イワナのお刺身…」

       

東京にいた頃は毎日、時計を見て同じ生活をしていたが、ここでは時間を気にすることもない、穏やかで充実した毎日を送っている

      

         

10月も半ばを過ぎると、山の山頂が色づきだす

政臣は軽トラックに沢山の木材を運んで来た、冬の蒔きストーブ用に斧で割り倉庫に並べている

           

縁側の日当たりのいい場所では琴子と美南はきよに編み物を教わっていた

「そこはこうするんだよ」

「あ~指がつりそ~…」

「琴子さんて不器用?」

「そうなの…」

産まれて来るのは、2月この辺りでは、一番雪も多く寒い時期、この子のためにオクルミを編んでいる

美南は新の為に、帽子を作りたいと、きよに教わっていた

     

       

               

🌁🌁

連休明けの会社に呼び出された、アニメ部の青木達

「すみません、うちの父も聞いていないようです」

「……そうなんだ…」

「それで、君達が作ったゲーム、僕に見せてもらえませんか?」

「……別に構わないけど…」

青木は持っていたPCを直樹に渡した

       

20分後には全てクリアした直樹……

「う、嘘だ…」

「一年半の大作なのに……」

「…これじゃ……子供でも半日でクリアします…」

「やはり……そう簡単には…ゲームなんて無理だったか……」

うなだれるアニメ部

「…これ、うちでゲームソフトにしませんか?手直しは必要ですが……」

「…ゲームソフト……」

「キャラクター等はそのままでも構わないですが…テニスにビキニ等は…向いてません、それとクイズ…これは彼女を知っているものなら簡単に解けてしまう、個人的な物が多いので全て変更になりますが……」

「そんなこと…できるの!」

「皆さんが協力してくれるなら、クリスマス前に完成させる事も可能です」

「クリスマス!」

「ただし!二週間」

「二週間?」

「二週間で全てを作り直さないと、クリスマス前に製品にするには難しいですよ、どうしますか?」

「クリスマス前に作れたら……コトリン見てくれるかな…」

「うちからクリスマス商戦の目玉として出せば、大々的にCMも流すことになると思いますが」

三人は顔を見合せ

「「「お願いします!!!」」」

と頭を下げた

    

「わかりました、明日から来て下さい、それとこのゲームをうちが手掛けることは厳密にお願いします」

    

三人が帰った後

青木のPCを借り、一人で企画書を作る直樹

改善点を書き出しながら、もう一度ゲームをしていく

よく、ここまで琴子の事を調べたものだ…とため息を付きたくなるほど、琴子の身の回りであった事がクイズになっている……

     

翌日の朝

「親父、お袋、当分帰れないから」

「……何かあったのかい…」

「クリスマス前にどうしても完成させたいゲームがある、昨日持ち込みで見たらけっこう手直しは必要だが、面白いゲームなんだ」

「そうか」

「わかりました…」

コーヒーを直樹の前に置いた紀子は面倒くさそうな、返事だけしてキッチンへ行ってしまった

     

           

            

連休明けから会社に泊まり込んでいる直樹、3日に一度戻るが、シャワーを浴びて着替えをして、直ぐに戻ってしまう

そんな時でも、沙穂子からの定期的な電話が入江家に入る

もううんざりしたように電話に出る紀子

「申し訳ないけど当分帰って来ないのよ…会社で寝泊まりして昼間に戻っても直ぐに行ってしまうから、あなたから連絡があった事を伝えてもね…仕事だし……遊んでる訳じゃないから…その辺りは理解していただかないと、こちらも困るのよね……」

とため息混じりで話して電話を切った

それを見ていた重樹は

「ママ…あんな言い方しなくても……」

「言いたくもなります…仕事をしているのよ、お気楽な学生じゃないんです…」

重樹に対しても、冷たく事務的にしか話さない紀子

重樹としてもこと状況はなんとかしたいと思っているが、どうにも出来ないでいる

沙穂子が訪ねて来れば、それなりに相手をしたければならない

最近では、直樹も沙穂子に対して感心もなく、無表情でいるし、紀子はさっさと部屋を出ていってしまう、公になっていなくても、直樹の婚約になるのだから無下にも出来ない……

    

泊まり込んでから数日

「社長代理…受付からお電話です」

「わかりました……」

ここ部屋は関係者以外の出入りは禁止されている

斗南大学のアニメ部の三人はここに寝泊まりするスペースをもらい、最小限の社員と作業をしている

直樹が電話に出ると、受付から沙穂子が訪ねて来ていると言われた

「要件を聞いてもらってよろしいですか…」

そう言われた受付は沙穂子が、差し入れを持って来ていると答えた

「すみませんが受け取って、警備員にこちらに届けてもらってくれますか」

受付は何か言いたそうだが、直樹に言われては、勝手は出来ない

電話を切ると、沙穂子にこちらでお預かり致します、申し訳ありませんと頭を下げた

沙穂子は、それほど忙しいのかと受け付けに聞くと

「この時期はいつもこんな感じです、クリスマスに向けて……」

申し訳なさそうに話す受け付け嬢

そうなのね……とため息をついて、受け付けに差し入れを預けて帰って行った

             

             

自分から融資を条件に直樹との見合いを願い、付き合い出したのに

自分の思い描いた直樹との休日とはかけ離れていく

「この時期はいつもこんな感じです…クリスマスに向けて……」

受け付けに言われた言葉……

           

社長代理を勤めている直樹に自由な時間などないことを実感する

あの時直樹とエレベーターであった時は、とても紳士的で一目惚れをした、琴子と話をしている姿に目がはなせなかった

          

「ったく…お前は開、閉も読めないのかよ…」

「ごめんね……慌てちゃて…」

書類を拾い集め、琴子の頭をポンッポンッと叩き

「ほら、これで全部だ」

「入江君、これから会議なの?」

「まぁ~な」

    

琴子と話す直樹はとても楽しそうだった

彼が入江直樹なんだと知り驚いた、噂とは違う姿

沙穂子が聞いていた噂は

容姿端麗、なのに女性に冷たい、これまでにどんな女性が告白してもその場で冷たくあしらう、無表情で誰も近付けない雰囲気

と聞いていた……

    

琴子が居なくなってからの直樹は、噂通りの、無表情で誰も近付けない雰囲気に、今は恋人のはずの自分にさえ、笑顔を見せる事もない……   

      

         

           

             

      

        

          

         

     

     

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No title

琴子ちゃんの、生活は順調に見えますが?入江君クリスマスに向けて‼️アニメ部の、ゲームづくり❓一方空気が読めない沙穂子さん、仕事何だから、相手出来ないよ?会えないことで、また、おじいさまに、頼るのかな?仕事だから、学生とは違う( -_・)?だけどv-214

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Re: No title

> ルナさんコメントありがとうございます

アニメ部が訪ねて来なければ、琴子ちゃんの事わからなかったですからね
ある意味アニメ部様々です

紀子ママはね……琴子ちゃんと比べてしまうのと、仕事をしているのだから…紀子ママも社長婦人な訳だから……

入江君に気に入られるって……けっこう難しいでしょうね
あの性格を理解するのは……(笑)

Re: No title

>なおちゃんさんコメントありがとうございます

琴子ちゃんはの生活は穏やかですね~

入江君はとにかく今出来ることを必死でやっております……
コメントをゲームにしたら、絶対琴子ちゃんも目にするはずですからね

沙穂子さんもね…紀子ママにしたら……オモチャ会社は今クリスマス商戦で一番忙しい時に、いちいち所在確認しないで!と言いたいでしょうね、入江君は遊んでいるのではないのだから……だけどそんな風に言えば角がたちますからね…



Re: ありがとうございます

>ルルさんコメントありがとうございます

琴子ちゃんはやっぱり環境も変わって、ホッとしてるでしょうね

沙穂子さんね……紀子ママと裕樹君はね…どうしても琴子ちゃんと比べてしまうから
そうなんですよね、まさかのコトリン……だけど沙穂子さんはコトリンを知らないのでは…大学が違うし……
今まではのんきに暮らしていたかもしれないけど、パンダイの社長婦人になるということは、クリスマスの何ヵ月も前から忙しいということをちゃんと理解したきゃね……

そうですね、沙穂子さんの場合どんな風にでも出来ますからね

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初めてイタズラなkissのIF物書いてみました