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宝物(6)

     

     

🏞️🏞️

琴子の歓迎会をする為にきよはキッチンに向かった

「今日は、和希さんも居るから、バーベキューするんだよ」

「うわ、やった!」

「お庭でバーベキューするんですか?」

「そうよ、この辺りの人はね、みんな自宅の庭でバーベキューするのが当たり前だから」

   

「そういえば、政臣じいちゃんは?」

「頼まれて出掛けてるの、夕方には戻るはずなんだけど」

「なんかね、最近いのししが畑を荒らすんだって」

「お父さんも市から委託された害獣駆除なら、それなりにお金も出るけど、個人的に頼まれちゃったから、お肉をもらってくるかもね」

「嬉しい~それならバーベキューで焼いてもらえる~」

きょとんとしている琴子に和希は

「ある意味自給自足、みたいだろ?」

「なんか…すごいね」

「琴子さんには考えられないでしょ?でもね慣れちゃうとたいしたことないよ」

     

そんな話をしていると、一台の軽トラックがやって来た

帽子を目深に被った誠也にそっくりながっちりとした体型の男

「政臣じい~お帰り~」

「……」

荷台から、大きな荷物を下ろしながら、美南に小さな袋に渡した

「琴子ちゃん、行こ」

和希に呼ばれて、外に出た琴子

「政臣じいちゃん、こんにちは」

「……ご苦労さん…」

「今日からここに住む琴子ちゃん」

「初めまして、相原琴子といいます、よろしくお願いします」

「…おう…」

「政臣じいちゃんは、いっつも、おうなんだから…」

誠也とは違って、寡黙な初老の政臣

「ここに居るのは、政臣じいちゃん、きよおばあちゃん、誠也さんと雪さん、それと美南ちゃんだから」

「わかりました」

「和希、これを持ってけ…」

「うわ!おも…」

「なんですか?これ」

「しし肉…」

          

政臣に渡された大きな袋を持って、キッチンに行くと、先に行った美南が

きよの隣で騒いでいる

「これ骨だよ!きよばぁ、どうするの!」

「……肋骨の部分はこのまま焼くよ、スペアリブよ」

「…ろ、肋骨…」

「きよおばあちゃん、これもだよ」

「ありがとう、またデカいのもらってきたわね……和希悪いけど、外の作業場に持って行って」

「オッケー」

「あれは、一匹分なんですか?」

「違うよ、あれで4/1って所かな、今日一緒に出掛けた人と畑の持ち主と別けてきたはずだから」

キッチンの棚から、大きな箱を出した、きよ

「さて…解体して、残りは保存しないと……」

と外の作業場に行ってしまった

「琴子さんも行こうよ、どうせ外でバーベキューだし~」

「はい」

   

🍖🍗

バーベキューの準備が終わる頃誠也が戻って来た

釣れた~と笑って聞く美南に

「当たり前だろ~」

と釣って来た魚を見せていた

初めて会った人達は、琴子が以前からここに居るように、接してくれた

琴子に何があって来たのかは、和希に聞いているはずだが、それには一切触れて来ない

ただきよは

(誰にだって知られたくないことはある、でもそれを一人で抱えこまない、話したところで何の解決にもならないかも知れない、でも気持ちの整理は出来る、だから辛かったら、誰かに話して気持ちを落ち着かせなさい)

と琴子に言ってくれた

   

    

                

🌉🌉

「和希どうした?」

「……入江に会った…」

「入江って……」

「厄介な事に…婚約者が俺を覚えてて……」

「…で?」

「琴子を俺の恋人と勘違いしていたから、はっきり言っといた、俺は恋人でもないし、女だって…そうでも言わなきゃ…琴子の事を聞かれそうで……」

「そりゃ厄介だな……男のままにしておけば…彼女の子供は入江君の子供じゃないと嘘をつけたのに……」

「わかってるよ…でも入江を見てたら、無性に腹立たしくて……」

「珍しいな、和希がそんな風に感情を出すなんて…」

如月の事務所にやって来た和希はソファに座った

「……気持ちも解らなくはない、お前達姉弟が、妹の様に可愛がって彼女だったんだ…光希も心配していた」

「琴子は……自分も悪いんだって言ってたけど…琴子の気持ちを知っててだ……一度だけなら、琴子の言うように、この先不安で何かにすがりたかったからって言える…でも違う……」

     

          

                     

                  

🌌🌌

琴子の歓迎会後、和希は琴子の部屋に一泊した

          

「…こんな事聞いたら、気を悪くするだろけど……」

「なに?」

「…入江とは……その…一度きりだったのか?」

琴子は深呼吸すると、横に首をふった

「……だよな…一度で出来たら……奇跡だ…」

「そうだね……あの頃…ほんとにどうかしてたんだよね…あたしも入江君も……入江君は夢を諦めないといけなくなったのと同時に…あの会社をどう建て直したらいいのか…だって何千て人の生活がかかってるんだもの……プレッシャーは半端なかったと思うんだ…」

「……」

「それにあたしだって……好きな人に…求められて…嬉しかった……たとえ誰にも言えない関係でも…あれだけ一緒に暮らしていても、女の子って意識されてないってずっと思ってたから……」

「…琴子は…ずっと可愛い女の子だよ……昔からずっと…」

「ありがとう……入江君の弟に言われたの……新婚ごっこって……不謹慎だけど…そう言われて…今はそれでもいいって思ったのも事実……おじさんが回復して、おばさんが戻るまで…その間だけでもいい…入江君の不安が軽くなるなら……そう思ってたし…あたしも……その時間は幸せだったし」

「…避妊…しなかったのか?」

「……それね…ほんとにそうだよね……妊娠なんてしないと思ってたんだよね…」

「え?」

「そんな簡単に妊娠なんてしないって…思ってた……だって……付き合ってた訳じゃないし……妊娠て…どちらも同じ気持ちだから………愛し合ってる人同士じゃないと…出来ないんじゃないかって……思ってた……」

「……」

「バカだよね~…今さらだけど……おじさんが倒れてから…あたしもストレスからなのか……ずっと……生理が来なくて…あの日はそれで病院に行ったの……妊娠のにの字も頭になかった……だから…妊娠してますって聞いて…嬉しいかったけど……どうしたらいいのか…分からなくて……和希君があの時止めてくれなかったら…赤信号にも気づかないまま……引かれてたかも……」

「琴子だけのせいじゃないだろ、入江にだって責任あるだろ…男は妊娠なんてしないからそれでいいかもしれない……でも女は違うだろ……妊娠に気づくまでに時間がかかる…妊娠してます、はいわかりました…では終わらない……産めないなら、それなりのリスクを負うのも女…、産んだとしてもでもこんなはずじゃなかったって後悔するのも、女……、男は子供が出来たから結婚してやったとか、世間体気にしてとりあえず結婚したとか、いろいろ言うんだ…結局妊娠した女の方がリスクを背負う事になるんだ……」

「……人を不幸にしたくない……入江君には幸せになってもらいたいもん…入江君が初めて好きになった人と……」

「……入江は幸せになっても…琴子は……」

「だから、いいのあたしはこの子と幸せになるから、この子には悪いけど…お父さんの事は……一生教えない…この世にはもう居ないって教えていく」

「……本当に、教えないのか…」

「教えないよ、教えたら、この子が不幸になりそうだもん、自分のお父さんはお母さんを捨てた…なんて思ってほしくないから」

「もしも……入江にバレたら…」

「あたしが認めなければいいだけ、いくら入江君が自分の子供だって言っても、母親のあたしが違うって言うんだよ、入江君が見合いして、自暴自棄になって…知らない人との間に出来たって言えば……入江君だって何も言えないでしょ…」

「…入江に通用するとは思えないけど……」

「そのために和希君や如月さんが居るんでしょ…入江君に見つからない様にするために」

「そうだな…」

「一月半だったけど……入江君と新婚ごっこが出来て、あたしは幸せだったよ、これからはこの子を守る為に頑張る、どんな事になってもこの子は絶対手放さない」

               

             

               

🌃🌃

「和希…」

「…あのカフェ気に入ってたんだよな……店員は物静かだったし、いつも奥の席を案内してくれて」

「婚約者の知り合いも来ていたなら、今後は出入りしない方が懸命だ」

「そうだな…今度はいかにもな古びた喫茶店を探すよ」

「入江君にお前の正体はバレてないか?」

「どうかな…あいつ目ざといから…この封筒見られた気がする……」

「封筒だけ?」

「名前は名乗ってないし、大学で顔を会わせたこともない、入江がいちいち俺を探す理由はないだろ」

「まぁ、そうだよな…」

「俺を見つけた所で、何も変わらないだろ……琴子はもう居ない訳だし大学も退学してるし、親父さんは引っ越し先を教えてない、琴子の居場所も教えていない、店に行ったとしても、従業員にも引っ越し先を教えてないし、琴子の事は知り合いの所で静養中って事にしてるから、探し様がないさ」

「和希がここまで慎重に事を運ぶって事は…その入江君てのは相当な切れ者と言えるな」

「そうだな…高校時代は全国模試は常にトップ、話ではIQ200とも言われているし、見たり聞いたりしただけで、何でも覚えてしまうと聞いてる」

「ほぉ~それは和希も、慎重になるな」

「当たり前だよ……いつも兄貴や姉貴の使ってる支援センターだと…探しだされる可能性が高い……そのくらい切れ者なんだ」

「だから…誠也に頼んだのか…あいつの所は未成年しか預けない事にしてるのに…」

「今の琴子には環境から変える必要もあるだろ……それに誰にも見つからない様にしないと…入江の後ろには、大泉がいるんだから…」

「それはあるな……」

「……妊娠する可能性があるのに…避妊さえしてたかった…いくら会社の為とはいえ…身勝手にも程がある……」

    

琴子の事を知ってから、和希と如月は、パンダイの経営状態など把握していた、それで持ち上がった見合いだと言うことも知っていた

大手出版社の北瑛社がパンダイとゲーム攻略本で提携しているのもわかっていたし、この見合いは孫娘が会長に話して出たものだと言う話も聞いてる

直樹とは歳も一つしか違わない、直樹の噂も耳にしていた事から、見合いをしたいと自ら願い出た

会長も直樹の事を調べていたから、孫娘の頼みとあればどんな手を使ってでも直樹と孫娘を合わせて接点を作り、いずれは直樹に北瑛社の仕事を任せたい

そんな時に琴子の妊娠が知られたら、どんな事をするかわからない…如月も今回ばかりは慎重にならざる得なかった

        

和希の前にコーヒーを出した如月は

「……こんな事を言っても……お前の気持ちは晴れないだろうが…」

「なに?」

「一月半の間に一度も避妊をしなかったのは…彼が彼女を好きだったから……とは考えられないか?」

「はぁ?なんだよそれ…」

「妊娠してもかまわない、出来ることなら彼女に子供が出来てくれた方が…彼は破綻にされる口実が出来る……そう思っての事だとしたら…」

「まさか…」

「…まあ、俺の推測だから……彼の本心はわからない…」

「…どちらにしても……琴子が妊娠しているかも知れないなんて…一ミリも考えてないだろうよ…婚約者が琴子の名前を出しても、何の反応も示さなかったんだからな」

「……さっき…大学生に話を聞いてきた子の話では……彼が唯一感情的になるのは彼女が絡んだ時だけ…それ以外の女性とはまったくと言っていいほど無表情だったと言う話だ…」

「…そうだとしても…今さらだろ…琴子に何も言わなかったんだ……琴子だって…言えないだろ…」

「そうだな……ここまで来たら彼女の事は絶対に知られない様に…彼女の気持ちを優先することに専念しよう」

        

         

           

            

                

    

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コメント

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この、お嬢様は自意識過剰なのでしょうか?それとも、狙った獲物は逃がさないという感じかな?入江くんの気持ちは、自分にあると思っているお嬢様。結婚しても、政略結婚だから、お嬢様には、寂しい思いをしてもらって離婚にして欲しいです。琴子ちゃんは、子供を産んで、ますます綺麗になって入江くんが悔しがるところが見たいです。

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No title

おもいっきり、入江君には後悔して貰いましょ⁉️入江君だけが、悪い訳じゃないけど、回りの大人の、せい😁入江君の、お父さんのかおと、体型に、似合わない傲慢ところ、大泉じいさんのせいですけど❓後、沙穂子さんの人に頼り過ぎるところv-67

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Re: No title

>ルナさんコメントありがとうございます

本当に、入江君は何を考えていたのやら……ですね

そうなんですよ、孫娘を可愛がる金持ち祖父!

琴子ちゃんは今一番自由でしょうね
それを壊される事がなければいいですね

Re: タイトルなし

> アメチさんコメントありがとうございます

狙った獲物というか、周りから入江君な噂を聞いていたから、興味はあったでしょうね、そして実物に一目惚れ
自分が選ばれない訳がない!と少なからず思っていた事でしょ
何せ、お祖父様は大手の会長だしね
だからお見合い後話が進み当然の事の様に周りに紹介したい訳ですが……
琴子が居なくなってからの入江君は……なんですよね……

琴子ちゃんは無事に出産して幸せになっていただいたですな


Re: タイトルなし

> アメチさんコメントありがとうございます

狙った獲物というか、周りから入江君な噂を聞いていたから、興味はあったでしょうね、そして実物に一目惚れ
自分が選ばれない訳がない!と少なからず思っていた事でしょ
何せ、お祖父様は大手の会長だしね
だからお見合い後話が進み当然の事の様に周りに紹介したい訳ですが……
琴子が居なくなってからの入江君は……なんですよね……

琴子ちゃんは無事に出産して幸せになっていただいたですな


Re: タイトルなし

> アメチさんありがとうございます
続きを楽しみにしております!!

Re: No title

> なおちゃんさんコメントありがとうございます

そうですね、後悔して欲しいですね!
確かに入江君だけが悪い訳ではないのですが…

そんな甘い事を言っていてはいけませんよね!

確かに人の良さそうな顔をしていましたね……
孫娘の為ならなんでもしちゃう、大泉会長は…

それを当たり前の様にしてる沙穂子さんもどうかと思います

Re: No title

> なおちゃんさんコメントありがとうございます

そうですね、後悔して欲しいですね!
確かに入江君だけが悪い訳ではないのですが…

そんな甘い事を言っていてはいけませんよね!

確かに人の良さそうな顔をしていましたね……
孫娘の為ならなんでもしちゃう、大泉会長は…

それを当たり前の様にしてる沙穂子さんもどうかと思います

Re: ありがとうございます

> ルルさんコメントありがとうございます

そうなんですよ…そりゃ噂を聞いてるから余計にね、いわゆる入江君て、御曹司で超優良物件な訳ですからね
今ままでどんな女性にも落ちない……

そんな人と知り合い、お付き合いなんてそりゃ自慢よね

融資ありきのお付き合い、なにかあればお祖父様が出てきますからね……

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