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宝物(5)

    

          

「…誠也さ~ん」

「お!来たか」

「やっぱりここにいた……」

「悪い悪い、まだ来ないって言ってたから」

「ひどいなぁ…」

      

車の側で待っていた琴子

「琴子ちゃん、こっちおいで」

「……はい」

「この人は、誠也さんね」

「おいおい…もう少しましな紹介してくれよ」

がっちりしていて、浅黒い男がニコニコ笑い挨拶をした

「よろしくな」

「よろしくお願いします」

「誠也さん、話した通りだから」

「任せろ」

「琴子ちゃん、誠也さんは元々警察官だった人だから、安心して」

「……え、そうなの…」

「見えないだろ」

「うるせ」 

             

そこは一面沢山の水槽の様な大きな池

「…これは?」

「誠也さんはね、趣味が総じて……転職したんだよ」

「趣味…」

大きな水槽には、沢山の魚

「養殖してるんだよ」

「……すごいですね」

「よし、そろそろ、ばぁも帰って来てるだろうし、行くか」

車に乗り5分ほど森の様な道を走ると家が見えてきた

「あ、きよばあちゃんも帰って来てる」

「…きよばあちゃんって……」

「ここの家主の奥さん」

「誠也さんは?」

「息子だよ」

     

森を抜けたら、大きな家に着いた

「こんなに大きな所だったの…」

「さっきは道路からしか見なかったからね」

少し小高い場所で、日当たりの良い開けた場所

「和希、ご苦労さん」

「きよおばあちゃん、よろしくお願いします」

「よくきたね、体はなんともない?」

「はい、大丈夫です、相原琴子といいます、よろしくお願いします」

おばあちゃんと聞いていた琴子は驚いた

思っていたおばあちゃんといった姿ではない、きよ

「そろそろ雪と美南も帰ってくる頃だ、中に入って」

「はい」

玄関を入り、通された部屋

テーブルにテレビ、小さな飾り棚には電話があるだけの殺風景だが、窓から入る日差しで明るい

誠也はキッチンでお茶を淹れて来ると

「今日は琴子ちゃんの歓迎会するんだろ?」

「だから、雪達に買い物を頼んだの」

「じゃ、二人が来るまでのんびりしてて」

琴子の目の前には常温の麦茶が置かれた

「暑いからって体を冷やすのは良くない、わかるな」

「ありがとうございます」

「じゃ、俺はちょっと、晩の魚でも釣ってくる」

「…坊主だったら……」

「わかってるよ!」

     

窓の外を見ると誠也が腰に篭を着けて歩いて行くのが見えた

「釣って……あの池?」

「違うよ、川だよ」

「川…」

「ここらは川釣りでけっこう穴場がある、ただうちの私有地だから他の者は行けないけど」

「し、私有地に……川…」

東京で入江家も、かなり広い庭があったが、比べ物にならない

今いる部屋から見える庭も有に三倍はある

「誠也がこんな所に家を建てたのも、釣り目当て…まったく国道沿いなら、楽だったのに」

「ここに来るまでの森の道…あれも私有地なんだよ」

「え!!」

市道からの家の入り口まで100メートルほどある

          

お茶を飲んでいると、ワゴン車が入って来るのが見えた

「「ただいま~」」

「きよばぁ、頼まれたの買ってきたよ」

「ご苦労さん、冷蔵庫に入れて、こっちにおいで」

二人の女性がパタパタと荷物を運び、やって来た

「「こんにちは」」

「こんにちは」

「和希さん!こんにちは」

「美南ちゃん、順調そうだね」

「うん」

「ご苦労様、大変だったでしょう」

「夏休みだし、平気だよ」

「そうだった、かず君は大学生だったね」

「こっちは今日からお世話になる琴子ちゃん」

「初めまして、相原琴子といいます、よろしくお願いします」

「私は雪です、よろしくね」

「美南です、よろしくお願いします」

「雪さんは、誠也さん奥さんで、美南ちゃんは琴子ちゃんと同じ、事情があってここにいる」

「話は如月さんから聞いてる、ここは最小限の人間しか関わっていないし、誠也は元警察官だから、あいつの周りにいる人間も、口は硬いやつばかりだから安心して、出産の順調しなさい」

「はい、ありがとうございます」

「雪、美南、琴子ちゃんを部屋に案内してやって」

「じゃ、行こうか、荷物はこれだけ?」

「はい、最低限の物しか持って来てません」

「わかったわ、足りない物は、おいおい揃えて行けばいいわ」

   

裏口を出ると車庫に出たその隣の平屋

「ここが私と琴子さんの住む場所だよ」

「皆さんとは別なんですね」

「そうよ、それと普段はこの裏口から来てね」

「はい」

               

             

「こっち半分は誠也さんの仕事の道具があるの、琴子ちゃん達はこっちね」

ドアを開けるとキッチンダイニングにリビング、奥には2つのドア

「琴子ちゃんはこの部屋ね」

「ありがとうございます」

「おトイレは、誠也さんの荷物部屋の横、お風呂はその奥にあるけど、みんな母屋のお風呂に入ってるの、だから洗面台だけ使えるから、食事は母屋でみんなで食べるから、ここのキッチンは、二人がお茶を飲んだりすらくらいの物しかないの」

「わかりました」

割り当てられた部屋には、ベッドに布団小さなチェストにテーブルがあった

            

🌁🌁

9月

大学が始まり琴子が来ない事を心配した二人

          

「琴子…自主退学してた……」

「嘘でしょ…」

「さっき事務員に聞いたの…スマホも代えてるし…金ちゃんに聞いたけど、教えてもらえてないらしいの」

「……じゃあ…どこに居るかもわからないの…」

「夏休みはおじさんの店にアルバイトに来ると思ってたけど、一度も来なかったって」

「まさか……思い詰めて…」

「それはないみたい……おじさんは知り合いの所に行ってるらしいから」

「そうなんだ…」

大学のカフェで理美が琴子を心配して、大学の事務員に話を聞いて来たり金之助にそれとなる琴子の様子を聞きに行ったが、琴子の居場所は知らされていない

            

              

             

       

🏠

入江家では、紀子は家事はしているが、それ以外ではリビングでぼーっとしていたり、部屋にこもったりしていた

琴子が同居する前は、習い事に行ったり活発に動いていたし、家でも鼻歌を歌いながら家事をしたりと、明るかったが今はほとんど口も開かない

お帰り、行ってらっしゃ以外は裕樹や重樹の話に相づちをうつていど

夏休み中、裕樹もほとんど外に出ないで部屋にこもりがちだった

           

             

最近は沙穂子が時折訪ねくる、直樹が仕事で会えない分、入江家に訪問し直樹に会っているのだが、紀子に歓迎されていないのはわかっている

              

紀子がキッチンに立つと、手伝いをしようとするが

「ごめんなさいね、他人には触られたくないの……」

とキッチンに入れないし、リビングで直樹や重樹と過ごしていても、紀子と裕樹は部屋に行ってしまったりする

         

この頃、直樹の態度が今までとは違うと感じ始めた沙穂子

琴子がいた頃は、自分に紳士的な態度で微笑んでいたのに、今はむしろ無表情で何を言っても、今は会社を立て直しで忙しい…と沙穂子の誘いは全て断っている

                 

           

そんな直樹に少なからず、イラつく沙穂子は祖父に頼んだのか

仕事中の直樹を大泉会長が訪ねてきた

「忙しいのはわかるが、たまには沙穂子のお茶の一つでも付き合ってやってくれ」

と言われてしまった

                

                  

会長に言われては仕方ないとこの日、直樹は仕事終わりに、沙穂子とカフェにやって来た

女性の多いカフェが苦手だが仕方ない……

そこには沙穂子の友人らしき女性もちらほら、沙穂子に挨拶をしてくる

沙穂子はにこやかに答えながら、隣にいる直樹をお付き合いしていると紹介する

沙穂子の友人なんかに興味もない直樹は無表情のまま頭を下げるだけだった

     

カフェの奥に目をやる沙穂子は

「まあ、以前琴子さんと一緒にいらした方ですよね」

と本を読んでいた人物に声をかけた

「…どうも」

和希は沙穂子に頭を下げると

「…なにか?」

「琴子さんはお元気ですか?あれから一度もお会い出来なくて」

「……そうですか、こんな街中で彼女とばったりなんて砂漠で指輪を探すのと同じでしょ…」

と話す和希

直樹はテーブルの上にある封筒に目をやった

(斗南大学…)

直樹の視線に気づいて、封筒を鞄に入れた

「琴子さんにこんな素敵な方がいらしたの、直樹さんは知ってました?」

「……」

「……僕は彼女の恋人じゃない、勘違いしてるみたいだから言うけど、僕は女だ」

「え…」

「……性同一性障害か…」

和希は鞄に持っていた本をしまうと

「……じゃ、失礼」

直樹達の横をすり抜けてカフェを出た

    

まさか直樹や沙穂子と合うなんて思ってもみなかった和希

店を出ると、はぁとため息をついた

直樹と顔を会わせるとは誤算だった

      

     

        

🏞️🏞️

    

「これ下さい」

朝市に並ぶ野菜を買う琴子、手には買い物リスト

誠也は買った物を持って歩く

「政臣じいちゃんが、言ってた物って…」

「あぁ…そうだった…じいにもたのまれてたな……」

「どこにあるんですか?」

「あれは、朝市じゃ買えない、ホームセンターだ」

車に戻り、ホームセンターに行くと誠也と一緒に頼まれた物を探しに行く

「これだ…」

「なんですかこれ?」

「発煙筒…」

「何に使うんですか?」

「ハチ取り」

「蜂?鳥?」

「ん…、じいは、蜂の子取りに行くんだ」

「はちのこ?」

「ここら辺では、オオスズメバチとかの巣を探して、蜂の子を取るんだ」

「え…駆除?」

「…食用…」

「………」

「これが高値で売れるからね、じいの小遣い稼ぎ……」

「誠也さんの養殖をお手伝いすればいいのに…」

「あの人はじっとしてられない、夏は釣りに害獣駆除、秋は蜂の子取りにキノコ狩り、冬はいのしし狩りと忙しい人なんだよ…」

「春は?」

「…山菜取り……」

「…ほんとにじっとしてられないんですね……」

「早期定年者だから、再就職するかと思ってたけどなぁ…」

       

       

       

      

       

               

                       

                           

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コメント

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でた‼️お嬢様、入江くんがお嬢様を避けているのに、嫌と言えないようにしてしまってますね。空気が読めないと言うより、私が主役、私が一番偉いと思っているお嬢様なのだなと思った。入江くんの心も自分にあると思っているお嬢様。むちゃくちゃムカつく👊😠

No title

琴子ちゃんは、元々の、明るさ取り戻しはじめているように思う😉子供の事だけ集中しようと、思っているのかも⁉️入江家に、訪ねつても、沙穂子さんのいる場所なんてないし?入江君が、忙しくしていて、相手が、出来ないと、不満をぶつける😉沙穂子とは違うし、琴子ちゃんは、同じ家に、帰って来てくれればいい見たいな所有るもんね、学校の、行き、帰りだけで、デートて言うぐらいだもん😱何でも、おじいさま頼りじゃなく、今でも、自分で、何とかしようと思うぐらいだから、沙穂子も、直樹も😁琴子ちゃんの、足元にも、呼ばない、確かに、二人の方が頭はいいかもしれないけどv-82

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Re: タイトルなし

>nanaさんコメントありがとうございます
そうです、個人のお家です
理由は…いずれわかります


Re: No title

>ルナさんコメントありがとうございます

琴子ちゃんが居なくなった途端に、これですからね…
沙穂子さんは不満でしょうね

そうなってくれるといいのですが……

みんなどんな風になるんでしょうね

Re: タイトルなし

>アメチさんコメントありがとうございます

入江君の本性とでもいいますか…
親の七光り……この場合祖父の七光り?とでもいいますか……
厄介な人には間違いないですね

Re: No title

> なおちゃんさんコメントありがとうございます

東京を離れて、入江家の人と関わりのある人や、自分を知ってる人がいないですからね
今はお腹の赤ちゃんのことに集中出来てます

デートに誘ってもなかなか動かない?直樹ですからね
かといってお宅訪問しても、居場所が……居心地も良くない…
紀子ママも裕樹君も……冷たいとなるとね…
琴子ちゃんは本当にちょっとしたことでも、喜んだり、落ち込んだり、だけど自分のわがままを言うこともなかったですからね、いつも側に居ても干渉しなかったですからね

Re: ありがとうございます

> いつも素敵なお話ありがとうございます。
> ルルさんコメントありがとうございます

本当にね、これだけ歓迎されていないと凹みますよね……
そうでしょうね、うわべだけのお付き合いの人達ばかりでしょうね

入江君は元々感情がなかった様な人ですから…元に戻ってしまっただけなのかもしれないけど
たぶん沙穂子さんにしたら、選ばれた事に浮き足だってる……
だから、入江家の人に早く受け入れてもらいたいでしょね


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初めてイタズラなkissのIF物書いてみました