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宝物(4)

   

琴子が沙穂子に頭を下げると和希は琴子の手をとり歩きだし、信号を渡り東京駅へ入った

「さて、新幹線で食べる弁当買おうか」

「うん…」

二人は駅の中の店内を回った

「うまそう…」

「…駅弁て…いろいろあるんだ…」

「琴子はどれにする?」

「えっと~このシュウマイのがいい」

「わかった、すみません2つ」

和希が財布を出すとあわてて財布を出した琴子

「いいよ、これ必要経費だから」

「必要経費?」

「兄貴にもらってる」

「…そうなんだ」

        

買い物を済ませ、新幹線乗り場に行くとすでにチケットも手配済みだった

和希は新幹線に乗る前に、如月に電話を掛けた

「もしもし、今から新幹線に乗るから、とりあえず今日は琴子の事を考えて、一泊するよ……わかってるよ…じゃよろしく」

「……」

少し不安そうに和希を見る琴子

「心配するな、兄貴達に妊娠だから、移動はい急がない様に言われてるから、今日は途中で一泊して、明日現地に行く」

「うん」

       

指定席に座ると和希は

「さすが兄貴、一番端とはありがたい」

「どうして?」

「…シートを倒すのに、後ろに誰もいないだろ?」

「…そっか」

       

🚅🚅

新幹線が東京駅を離れ始めた

「…ねぇ…和希ちゃん」

「ん?」

「さっき…どうして、僕達って…」

「…あれか…………琴子は…性同一性障害って知ってる?」

「…うん…少しだけど………もしかして…」

「そうなんだ」

「…そっか……」

「驚いた?」

「…ううん、でもあたしの前では、私って…」

「琴子を混乱させたくなくて…俺が女の子だった時しか知らないだろ」

「うん…」

「だから、私って言ってたんだ」

「……でも、俺って言われても違和感ないね」

「…ホルモン注射を射ってもらってるんだ」

「注射でそんなに変わるの」

「まあね、ホルモン注射を使ってると、女性らしい体つきが、なくなる、髭も生えるんだ」

「え!」

「だから見た目も男になるから、違和感がないんだ」

「じゃ…性別も変えたの?」

「それはまだしてない……将来的には判らないけどな、学生のうちはこのままでも困らない、性別を変えることも可能だけど……けっこう費用がかかるから…」

「そうなんだ…」

「そんな顔するなよ、今はすごく自然に生きてるんだからさ」

「でも、いつわかったの、小学校の時は……」

「もうあの頃から違和感はあったよ、でも自分がおかしいって知られたくなくて隠してた、アメリカに行って向こうで同じような悩みの奴にあって、いろいろ話をしたんだ、日本より向こうは理解があったからな、向こうの病院で診断されたし、親は驚いてたけど…今は普通に接してくれてる」

「じゃ、これからは和希君て呼んだ方がいいのかな?」

「それは琴子に任せるよ、性別変わってないし」

     

昔から少し男の子っぽいところはあったが、髪を伸ばして、スカートを履いていた和希を周りは、活発な女の子という見方をしていた

その頃はまだ、性同一性障害なんて言葉はそれほど浸透していなかった、父親のお店に来るお客さんの中には、ニューハーフの人もいたが、女性が男性の格好をしているお客さんは見たことがなかった

         

                 

新幹線がはじめの目的地に着いた

「今日はここで、一泊だ」

「…あたし初めて来た……」

「そうか」

「和希君はよく来るの?」

「そんなには無いけど、アルバイトで何度か来てる」

「アルバイト?」

「…琴子みたいな子を施設に連れて行くこと、だから必要経費が出る」

「…どうして和希君なの?」

「女二人よりも安全だろ、見た目」

「……」

「要するに、女性だけだと、もしかしたら相手がどこかで待ち伏せてることもあるからだ」

「……それで大丈夫なの?」

「こう見えて、空手の有段者だし、合気道や護身術もやってるんだけどな」

「すごい」

目を丸くする琴子に和希は

「その顔、昔のまんまだな」

「え?」

「やっと琴子らしくなってきた」

「……あたしらしく?」

「ずっと、笑顔見てなかったからさ」

「…なんかね……東京離れたからかも…正直ホッとしてる……」

「よかった、姉貴は東京近郊の方がって言ってたんだ、親父さんの事もあるし、でも…もしもどこからか話が漏れた時の事を考えたら……あの切れ者の入江だから直ぐに見つける可能性が高い、だから入江、その周りの人間とは無縁の場合にしたわけ」

         

駅から大分離れた繁華街のホテル

「すみません、鈴村です」

「承っております」

フロントで記入すると

「ツインのお部屋になります」

「ありがとうございます」

      

「明日の朝、レンタカー借りて、のんびり移動しよう」

「……もしかして…交通機関が…ないとか……」

「アハハハハ、そんなわけないよ、電車でもバスでも行けるよ、ただし本数が少ないから、それに高速なら楽だろ、途中のサービスエリアとかで、休憩も出来るから」

「…そっか……交通機関が無いのかと思った…」

「ここからだと、乗り換えしなきゃいけないんだ、高速なら乗り換えなしで行けるからだよ」

             

                   

           

🏞️🏞️

「誠也さん、どうしてお買い物に行くのに…隣の市なんですか?」

「ん~、市内でもいいだろうけど、もし琴子の事を誰かが探していて、写真を見せたとき、居場所を特定されやすくなるだろ、それにあの辺りは市とは言っても……顔見知りが多い、写真を見た人は琴子を知らなくても、知ってる人が側にいる可能性もある、その点隣は、観光地で人の出入りも多いし、人口も多いからね」

「そんな所も配慮されてるんだ……」

車は高速道路を走り一時間ほどで隣の市に着いた

「…お金を下ろすのも、和希君から止められてるけど……」

「そりゃそうだよ、使ったATMを特定されるからね」

「…でも、申し訳なくて……きよおばあちゃんに…」

「アハハ、うちのばぁの心配?」

「だって……」

「ばぁは、会議とかであっちこっち行くしね、和希君ともよく会うから気にしなくていいよ」

「きよおばあちゃんはすごいなぁ…」

「あの人はね、強い人だよ、自分の親だけど本当に尊敬するよ、うちの親父自由な人だからさ……若い頃から好きな事ばっかりやって来た人で、それを影で支えてたのは、ばぁだから…」

「でも、雪さんも誠也さんも、けっこう自由ですよね?自分達の趣味をずっと続けてる」

「まあね」

「雪さんもフラメンコの発表会とか、教室開いてるし、誠也さんは魚釣りばっかりだし……」

「それもそろそろ終わりだ…」

「へ?」

「川釣りはね、年間通して出来ない期間限定なんだ……」

「そうなんだ…知らなかった」

「そりゃ興味なきゃわかんないよね」

            

                

🌻🌻

一泊して、和希がレンタカーを借りてきた

琴子の事を考えて、高速のパーキングでゆっくり過ごしながらの移動、いつもなら1時間半もすれば着けるのだが、琴子を連れているから、休憩を多くとった

移動しながら、和希は琴子に出産後までの話をした

病院はあっても産婦人科のある病院は、車で1時間ほどかかる

「病院は姉貴の紹介で行く所に決まっているから、琴子の身元を調べに来ても、病院には守秘義務があるから、家族が捜索願いを出さない限り、教えることはない」

「うん」

「生活に必要なお金は、自分では絶対に下ろさないで、必要な時は、これから紹介する人達に頼んで、その人達が下ろしに行ってくれる、急に必要になったら立て替えてくれるから」

「そうなの…」

「あとは……仕事だな、とりあえずは今日からお世話になる家の事をしてくれたらいい」

「わかりました」

移動している間、ビルの立ち並ぶ景色から、緑の多い道を走る、途中のパーキングで車を下りると

「あ~なんか、涼しい~風が気持ち~」

と琴子は背伸びをして、深呼吸していた

「そりゃね、東京と違って緑も多いし車も少ないから」

「なんか~秋田のお母さんの田舎に似てる」

「なるべくそういう所を選んだからな」

「え?」

「琴子が居た所に似ていたら……気持ちが切り替えられない、だから環境を変える事も必要、琴子が少しでも安らげる場所を選んだ」

「ありがとう」

       

             

            

            

     

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キャー😆琴子ちゃんが拉致られたー😀でも、琴子ちゃんのお父さんには、いつ妊娠したって言うのかな?重雄さんどうするんだろうか?

No title

琴子ちゃんの周りには、琴子ちゃんを助けてくれる人がたくさん、夏休みが、終わっても東京に帰ってこなきゃ重雄お父さん心配するだろうし、でも、お父さんのことだもん、娘のことはよくわかってるみたいだね、入江君の、親よりむしろ、子供が何を、したいかよくわかっているし、子供を見ていないようで、よく見ているよねv-43

Re: No title

> ルナさんコメントありがとうございます

そうなんですよ、トランスジェンダーなんです

琴子ちゃんにしたら、お姉ちゃんだった人だからね
和希君も気を使って私と言ってくれていたんです
本当にね~入江君より、男気ありますね!

入江君は……とりあえず自暴中ですね

Re: こんにちは

> ルルさんコメントありがとうございます

そうですね書いてて、これでいいのか…と思ってしまうこともあります……

入江家は諦めの境地ですよね、入江君が決めてしまったから

お嬢様は嬉しいでしょうけど……

入江君が今後どうなるかですね

Re: タイトルなし

> アメチさんコメントありがとうございます

あは!本当にね~ある意味拉致よね、お父さんさえ居場所を教えられないなんて!

重雄さんはきっと本当の事を知ったら、琴子ちゃんの事は絶対入江家に知られない様に、動いてくれると思います
だって琴子ちゃんのお父さんだから

Re: No title

> なおなおさんコメントありがとうございます

琴子ちゃんの周りは本当いい人が多いです
お父さんも心配だろうけど、今の琴子ちゃんには必要な事だと応援してくれるでしょね

入江家の両親て、どこか入江君には強く言えないのだと思います
やっぱりあの黒歴史が有るから……

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